header

  • 本予告
  • 本予告ショート
イントロダクション

ファンタジーの最高傑作にして、ラブ・ストーリーの金字塔『美女と野獣』。小説、絵本、アニメーション、映画、ミュージカルと、様々に形を変えながら愛され続けてきた物語だ。

そして2014年、薔薇に囲まれた壮麗な古城、神秘的な不思議の森、眩いほどに優美な衣装とジュエリー、二人だけの舞踏会などロマンティックな名場面の数々──スクリーンいっぱいに広がる幻想的な世界が、実写映画版として、ここに完成した。

人を愛し、愛されなければ、人間の王子に戻れない野獣と、薔薇を盗んだ父の代わりに野獣の城に囚われの身となった美しい娘ベル──誰もが知っているこの物語には実は、語られることのなかった秘密があった。

それは、なぜ、王子は野獣になったのか?いったい、彼はどれほどの罪を犯したというのか?という大いなる謎。実際、ほとんどの作品が、「思いやりの心を持たなかった罰」としか触れていない──。

フランスで生まれたこの物語の、秘められた深淵に挑むのは、気鋭監督クリストフ・ガンズ。1740年に書かれたヴィルヌーヴ夫人の原作小説を徹底検証し、ベルが野獣のミステリアスな過去を解き明かしていくというスリリングな展開に発展させた。

自らの手で運命を切り開こうとする現代的な性格と、エレガントなドレスが似合うクラシカルな美貌をあわせ持つベルに扮するのはレア・セドゥ。『アデル、ブルーは熱い色』で、カンヌ国際映画祭史上初の主演女優へのパルム・ドールに輝いた次世代スターだ。

野獣には、強烈な存在感をスクリーンに刻んできた個性派俳優、『ブラック・スワン』のヴァンサン・カッセル。

野獣の過去に隠された、悲しくも美しいもう一つの愛の物語とは果たして──。おとぎ話でありながら、大人をも魅了し続ける傑作が、新しい驚きを息吹に、かくも切なく、かくも豪華に生まれ変わる。

ストーリー

都会の贅沢な暮らしに別れを告げ、田舎へと引っ越すことになったベル(レア・セドゥ)。裕福な商人だった父が、財宝を積んだ船を嵐で失い、破産したのだ。

母亡き後、わがままに育てられた3人の兄と2人の姉は田舎暮らしに不満を募らせていたが、思いやりと勇気に満ちたベルは、家族が一緒なら幸せだった。

やがて船が一隻だけ見つかったという知らせが入る。父は、喜び勇んで街へ駆けつけるが、それさえも借金のカタに奪われてしまう。失意の帰り道、吹雪に見舞われ死に瀕した彼は、森の奥にたたずむ古城を見つける。

城に飛び込んだ彼が目にしたのは、豪華な食事やワイン、そして家族が望んでいたドレスや宝飾品の山だった。主人の姿がみえない謎めいた城に命を助けられた商人は、ふと庭に愛しい末娘ベルが土産にと望んだ薔薇を見つける。

思わず一輪手折った彼に、突然、黒く大きな影が襲い掛かる。「俺の一番大切なものを盗んだな、この恩知らず!」と怒りに燃えているのは、見るも恐ろしい野獣だった。

野獣は薔薇の代償に商人の命を要求し、1日だけ猶予を与えるが、戻らなければ家族を順番に殺すと宣告する。

翌朝、意を決したベルは、「ママは私を産んで死んだ。私のせいでパパまで失いたくない」と、父が野獣に教えられた呪文を馬に囁く。すると、森の木々が道を開き、馬に乗ったベルは城へと導かれるのだった。

用意されていたドレスに身を包み、ディナーの席に着くと、背後から野獣が忍び寄る。ベルは命を差し出す覚悟だったが、野獣が求めたのは、夜の7時に必ず食卓に着くことだけ……。

その夜、何かに誘われるように、ベルは全盛期を誇った頃の城と、一人のプリンセスの夢を見る。翌朝、好奇心が恐怖に打ち勝ち、果てしなく広い領地を探検するベル。薔薇の庭にある哀しげな女性の彫像こそが、夢に出てきたプリンセスだった。

どうやら彼女は、若くして亡くなったらしい。野獣の秘密を解き明かそうと決意したベルは、城の過去を紐解くにつれて、プリンセスと彼女の最愛の王子との驚くべき運命の物語に夢中になっていく。

一方、横柄な態度で命令する野獣が、時折見せる悲しい瞳に、心を惹かれ始めるベル。いったい野獣は何者なのか? ついにその真相が明かされる時、ベルと野獣に思わぬ危険が迫る──。

  • ヴァンサン・カッセル

  • レア・セドゥ

  • アンドレ・デュソリエ

  • イボンヌ・カッターフェルト

  • クリストフ・ガンズ

フランスで語り継がれてきた、
おとぎ話「美女と野獣」

多くの人に、ディズニー版長編アニメーション映画として知られている「美女と野獣」だが、元をたどればこのおとぎ話は1740年にフランスのヴィルヌーヴ夫人により執筆された数百ページに及ぶ物語が最初だと言われている。

そして1756年、同じくフランスのボーモン夫人が、文庫にして30ページ弱の短縮版「美女と野獣」を発表。これが現在世界で広く知られる物語の元となる。

フランス文化のDNAの一部とも言える“おとぎ話”の映画化を手掛けたいと熱望していたクリストフ・ガンズ監督は、元祖・ヴィルヌーヴ夫人版の物語を深く探求し、今まで絵本、アニメーション、映画、ミュージカルなど様々な形で描かれてきた「美女と野獣」に、まだほとんど取り上げられていないエピソードがあることに気付く。

ベルの父や二人の姉の性格、また王子が呪いをかけられた理由については、ほぼ触れられていないのだ。

「ヴィルヌーヴ夫人による原作は、ギリシャ神話やローマ神話、特に古代ローマの詩人オウィディウスによる“Metamorphoses(変身物語)”からヒントを得ている。

僕は、このヴィルヌーヴ夫人版をベースにし、偉大な神々の要素を物語に反映させながら、人間と自然の力とのつながりを描きたいと思った。現代では、日本の精霊信仰をルーツとする宮崎駿監督の作品に、これと似たテーマが見られるね」と監督は言う。

またガンズ監督は、1946年に撮られたフランスが誇る芸術家ジャン・コクトー監督版『美女と野獣』をリスペクトしており、同じ『美女と野獣』の映画化が相当なチャレンジになることを覚悟していたが、「コクトーのリメイクをするつもりはなかった。むしろ今まで描かれてこなかったおとぎ話を新しい形で映画化したいと思ったんだ」と語っている。

すべてが即決した
運命のキャスティング

主役のキャスティングは、脚本を書いている時点から、ヴァンサン・カッセルとレア・セドゥ以外考えられなかったとガンズ監督は語る。

「ヴァンサンなら、マスクの後ろに顔を隠していても、感情の起伏を表現することができる。退廃的な王子とワイルドな野獣の両者を一人で演じる事ができるのは、フランス国内でヴァンサンしかいないと確信があった。

また、私たちの『美女と野獣』はベルこそが真の主人公。時代に左右されない魅力を持ち、モダンでありながらクラシカル、ナチュラルでいながら洗練されているレアは理想的だった。

彼女が演じた、父のために身を捧げ、やがて悲痛な生き物の瞳の中に愛を見つける強くて若いヒロインを中心に、この物語は展開していくんだ」

ヴァンサンは、「演じるのが面白かったのは、野獣になる前の王子の、ゾッとするような一面。うぬぼれが強くて、権力欲も強く、悪意に溢れている部分だ」と語る。

一方のレアは「とても光栄に思い、すぐさまこれは私のための映画だと確信したわ。子供の頃、『シンデレラ』や『眠れる森の美女』などディズニーのクラシック作品を見て育ったの。

なかでもベルは最も魅惑的なヒロインだと思う。若い女性が愛を見つけるために旅立つという素敵な物語だしね」と語っている。

プロデューサーのリシャール・グランピエールは、「『美女と野獣』というテーマに、レア、ヴァンサン、クリストフ、という組み合わせ。まさに周囲が興奮しているのを肌で感じたよ。運命のプロジェクトだったと思う」と振り返る。

由緒正しいドイツのスタジオに
建てられた豪華な古城

撮影は、ベルリン近郊のバーベルスブルグのスタジオで行われた。ガンズ監督はこのスタジオでの撮影はとても感動的な体験だったと語っている。

「この同じスタジオで、『メトロポリス』(26)や『嘆きの天使』(30)などドイツ映画の傑作が撮影されたんだ。僕は夜になるとスタジオ内をぶらぶら歩き、フリッツ・ラング監督がこの場所でメガホンを取っている様子に想いを馳せていたんだ!」

今回の物語は、“今”と、野獣がまだ王子だった“昔”の二つの時代を平行して描いていく。“今”はナポレオン一世の第一帝政時代に設定され、当時の絵画から映画全体の景観のインスピレーションを非常に多く得たという。

そして“昔”はそこから3世紀ほど遡った時代に設定された。

現在の城は呪いをかけられた薔薇で覆われているが、かつての全盛時代の煌めく城は、ポルトガルのマヌエル様式に従って作られた。

ゴシックとルネサンスの間で、複雑な装飾、ひねった柱、縄、アラベスクなどに溢れている。そこにハンターである王子の野蛮さを加えるために、スコットランドのロスリン・チャペル風のいかつい柱が建てられ、メソポタミア時代のV字型の刻み目が入れられた。

ベルの部屋だけは、優美なルネサンス様式で作られている。

特殊メイク無しの野獣が
出来上がるまで

子どもの頃、ダークファンタジーに夢中だったガンズ監督は、伝統的なモンスターをダンディでセクシーな存在としてイメージしていた。また、超人的でありながら、哀れな生き物としても描きたかった。

ヴァンサンの演技は、2段階に分けて撮影された。セット上では、衣装を着てレアと一緒に演技をする。ただし、顔の眉から顎まで以外は、いくつかの印がつけられたホッケーのヘルメットのようなもので覆われていた。

ヴァンサンが現場に入り、衣装とヘルメットをつければ、撮影はスタート。午前3時に起きて、野獣の皮をかぶるために接着剤で塗り固められるというような必要は全くなかった。

それから1カ月後、ブラッド・ピットがデヴィッド・フィンチャー監督の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)でも行った、顔面アフレコの撮影がモントリオールで行われた。

つまり、ヴァンサンは複数のカメラの前で、体を動かさずに顔面だけで、もう一度全てのシーンを演じなければならなかったのだ。

この顔面演技をマスクと合成するのだが、マスクはCGではなく、髪の毛1本1本を埋め込み何百時間もかけて作られたものが使われている。そのマスクを高解像度でスキャンし、ヴァンサンのイメージに当てはめると共に、コンピューターで必要な部分を付け足しながら、空想の世界に生きる野獣を、現代のスクリーンに活き活きと甦らせた。

「エレガントで息をのむように素晴らしい」
が絶対条件の衣装

ガンズ監督は当初、19世紀初頭にフランスで流行した、簡潔で直線的な“エンパイア・スタイル”の衣装にこだわっていた。

だが、レアが提言した「一つの時代だけに幅を狭めてしまうのはもったいない、タイトなウェストのフワフワのガウンやプリンセス・ドレスのようなスタイルにも挑戦したい」という意見を取り入れ、今の美しい衣装が誕生した。

衣装のピエール=イヴ・ゲローは監督から、「エレガントで、息をのむように素晴らしく、上質で色彩豊かであること」という信条を守れば、あとは自由にデザインしていいと言われたという。

だが、野獣がベルに贈るドレスの色だけは、監督が映像に沿って決めていた。1着目はアイボリー。ピエールらの手によりスペイン風の細かい刺しゅうやレースが施された。2着目は光り輝く青。

アクションがあるので、水中や氷上で動きやすいつくりになっている。次は野獣の領土の豊かな緑と一体化するベルベットの緑。これには熟練の腕によるフリルを施した。

最後の赤は、最も変化の激しいシーンで着用されたが、あえて繊細で洗練されたドレスにした。ガンズ監督は日本風のデザインを特に好んだので、折り紙からのインスピレーションを、袖やラインストーン、刺繍に取り入れているという。